CL ベスト16 2nd.leg
vsアーセナル『完全燃焼』
「ミランはすべてを出し切った。これ以上はできなかっただろう」
スタンドで見るはめになったセードルフは、こう語った。
オレもまったく同じ意見だ。
「偉大なチームに負けた」(カラーゼ)ただそのひと言だ。アーセナルは、強かった。
ただ、ただだ。それを承知の上で、敗れるとは予想もしていなかったし、覚悟もしていなかった。
これは、きついわ。
舞台はサンシーロ。ミラノの町が、ミラニスタが、この一戦を待ち焦がれていた。
明らかにスタンドはいつもと違う雰囲気をかもし出し、ピッチに現れた選手たちは、誰もが「闘う男」の顔をしていた。
セードルフを負傷で欠いたミラン。ただ、アーセナルにもロシツキがおらず、トゥレもいない。
ミランにはロナウドもいないが互角といっていいだろう。
ここにきての選手の離脱は、敗北の言い訳にはまったくならない。
数々の名勝負名ドラマを演じてきた舞台に立った22人は、それに恥じることのない最高のゲームを見せてくれた。
また1つ、歴史に残る死闘をオレの頭に刻み込んでくれた。
試合序盤は、サンシーロの後押しを受けて、エンジン全開のミランが押し込んだ。
セットプレーできわどいシーンをつくると、18分にはパトが決定機を迎える。
この18才の若者ぬきに今のミランは語れない。パトはこの大舞台にも臆することなく戦っていた。
間違いなく本物だと、オレはこの日さらに確信した。
21分にはカカが左足を振り抜く。そう、カカが前を向いて仕掛ける時間をミランはつくれていた。
だが、アーセナルが徐々にゲームを支配していく。
33分のセスクのシュートはバーに弾かれて難を逃れたが、アデバイヨールのキープ力と個人技は、ネスタでさえも抑え込むことはできない。
カカはフラミニのプレスにつかまってしまい、インザーギとパトにまでボールが渡らなくなってしまった。
アーセナルの素晴らしさとは、シュートパスをつなぎながらどんどん後ろから人が沸きあがってくる攻撃だが、そのリスクを補うだけの運動量とはやい攻守の切り替えこそが、アーセナルの素晴らしさの本質だろう。
ミランはボールを奪ってもすぐに奪い返された。
アーセナルのハイプレスがゲームのテンポをはやめ、ミランの選手たちは息をつくひまもない。
しっかりつなぎながらラインを押し上げて攻めたくても、どうしてもロングボールが多くなってしまい、跳ね返されては守備に走らされた。
だが、ミランの中央は固い。前半は大きな支障をきたすことなく、ミランらしくゲームを進めたともいえる展開だった。
後半に入ると、アーセナルの攻勢はより勢いを増した。
センデロスの近距離シュートはカラッチの正面に飛び、ピルロが信じられないパスミスをおかし、エヴエにフリーでシュートを許した。
アーセナルに主導権を握られたまま、ミランはどうにか最終ラインで耐え続けるしかなかった。
耐えて、一発を待つしかミランに手はなかった。
だが、パトはまったく存在感を消してしまい、カカは常に2、3人に周囲を囲まれて活路は閉ざされている。
ピッポは後半見せ場をつくれないまま、69分にジラルディーノと交代した。
そして74分には、交代で入ったウォルコットにビックチャンスをつくられた。カラッチの好判断で一命はとりとめたが、もう限界が近づいていた。
しかし、アーセナルも徐々に疲れが見えはじめる。
中盤のプレスが甘くなると78分にはパトがシュート。カカも高い位置で前を向いてプレーするスペースを見つけはじめた。
だが、とうぜん疲労がたまっていたのはアーセナルだけではなかった。
83分、セスクはピッチ中央でボールを持つと、ガットゥーゾを簡単に交わしてミドルシュートを放つ。
これが、なんとカラッチの手の届かないコースへ飛び、ゴールネットが揺れた。
セスクがシュートを打った瞬間、まさか入るとは思わなかったけど・・・、入った。
ネスタとカラーゼを何とか突破しようと攻撃を仕掛けていたアーセナルだが、その2人に挑む前にセスクはシュートを放った。
「力が弱まったなかでのシュートからだった」とアンチェロッティは言う。
オレも、アーセナルは、セスクは、疲れていたからあそこからシュートを放ったんだと思う。
だが、あのシュートをこの時間帯に打ったセスク。彼を素晴らしいと言うしかない。事実上、このゴールでゲームは終わった。
カラッチはけっして責められない。1stレグを考えても、彼がいなかったら、もっととんでもないことになっていたのだから。
ガットゥーゾが振り切られたのは痛恨だった。あの闘犬が何もできず(ファウルさえも!)、追いすがっただけだった。
だが、誰がガットゥーゾを責めることができよう。
信じられないスピードで負傷から復帰してきてくれた。ベストには程遠い状態だとは思うが、ガットゥーゾがいなくては、ミランはミランではないのだ。
コンディションが敗戦の言い訳にならない。
だが、12月に日本にやってきて、1月にハイペースで飛ばしすぎたツケは、大きかったといわざるえない。
カカもネスタも満身創痍。カラーゼ、アンブロジーニは、08年なってからすでに何ゲームを戦った?
みんなできるかぎりのことはしたのだ。精一杯やっていた。
本当にそう思った。だからだと思う。
この敗戦にショックを受け口がとうぶん開いたままだったけど、怒りはまったく沸いてこなかった。
オレらのためにも、素直にアーセナルにはファイナルに行ってほしい。
敵ながらも賞賛したくなる美しいサッカーだし、ミランを倒したのだから。
選手や監督に怒りが沸いてこないから、なんだか自分を責めたくなる。
某むらさきのチームの取材で忙しく、1stレグからゲームは見ていたが、生で見ていなかった。
このコラムもサボった。オレのミランへの情熱が少し薄れていたから負けたのか―。
決して薄れてはいないし、そんなことはいっさい関係ないのはわかっているが、そんなことを思いたくなる。
それにしても、ベスト16での敗戦はさみしすぎる。
何にも変えることのできない、このゲームのこの緊張感を、あと一年間味わえないとなると、禁断症状が出てきそうだ。
だが、今季はセリエA12ゲーム、これでシーズンが終わる。
また来年この舞台に立つために、頑張るしかない。頑張っていこうな、カカ、ミラン。
残り12ゲームは、オレはCLファイナルのつもりで臨むことを誓うよ。