セリエA 21節 vsフィオレンティーナ
『この強さこそミラン』
4位を争う直接のライバル、フィオレンティーナ戦。
アルテミオ・フランキのナイトゲームには、オレの望むべく姿、120%のミランが登場した。
選手それぞれがいつもより2割り増しの気合の入れようで、このゲームに立ち向かっていた。
カカとピルロにいたっては3割り増しと言ってもいい。この切り替えがうまいところがミランの良さでもある。
ただ、それでも非常に厳しいゲームだった。
フィオレンティーナは効率性と個人技に優れた攻撃でミランを圧倒し、ミランは苦しい時間を多く強いられ、耐え続けた。
フィオレンティーナは、本当に強かった。
アンチェロッティは、ジラルディーノの1トップを選択。戦列を離れたガットゥーゾの代わりにブロッキを起用した。
パトをベンチに座らせ2トップを選択せず、水曜日に好プレーを見せたらしいエメルソンもベンチ。少しでもリスクを回避する彼らしい選択だ。
ただ、それはプランデッリも同じ。ドナデルやリベラーニではなくヨルゲンセンを起用して、戦える選手を並べた。勝ち点の重みを両指揮官はすごく感じていたのだろう。
アンチェロッティの采配。このゲームに関しては(という前置きはつくが)、オレは手放しで賞賛したい。
オレでもジラの1トップを選択しただろう。パトを投入するタイミングは少し遅かったとは思うが、パトがベンチにいることは心強かった。
そして、オレの予想をも上回った、セードルフの交代だ。まさかあそこで2トップに変更できる男だとは。
ミランは追いかける立場である。勝たなければならない。アンチェロッティの決断は素晴らしかった。
そして、エメルソンとファバッリの投入で、フィオレンティーナの恐ろしい攻撃を抑え込んだ。
一発勝負の修羅場の経験値で、プランデッリよりアンチェロッティの方が一日の長があった。
プランデッリはヴィエリ投入の遅れを悔やんでいるだろう。
前半、ミランはジラがシュートチャンスを迎えたがゴールには至らず、フィオレンティーナの圧力の前に押し込まれた。
パッツィーニはキレ味抜群でネスタに襲い掛かり、サンターナはマルディーニをもろともせずクロスを供給する。
そのクロスに対してオッドは無意味な存在で、ムトゥは何度もカラッチを強襲した。
ガードを固め目だけを光らせて、なんとか前半を0で折り返したが、後半はもっとひどくなる。
クロスを跳ね返しても、セカンドボールをことごとく拾われ波状攻撃を受けた。
しかし、攻められるのは計算済みでもある。120%のミランなら耐え切れるんだ。
カウンターで数々の勝利を導いてきたカカがいる。そしてパトという切り札もある。
ミランは強者に対する必勝パターンに持ち込むことに成功した。
このゲーム、アンチェロッティミランの強さが最大限発揮されたゲームだったといえるだろう。
その強さは、CLをも制する強さだ。ミランの勝ちは必然だった、とオレは思う。
チームの勝利であったことは言うまでもないが、パトに触れないわけにはいくまい。
7番を背負って66分にピッチに送り出された青年は、冷静にチャンスをモノにしてミランを勝利に導いた。
ロナウジーニョのような圧倒的なスキルで周囲を魅了するわけでもない。メッシのように圧倒的な敗北感を味あわせる、恐怖に満ちた選手ではない。
だがパトは、ゴールを奪い、結果を残す。
カカからダイレクトでパスがやってきた時、パトはトラップミスをした。そして、おそらくシュートも想いどおりにヒットしてはいないだろう。
パトは2つのミスを犯したにもかかわらず、ゴールネットを揺らし、ミランに貴重な勝ち点3をもたらしたんだ。
これは、”運がいい”ではもう説明がつかない。
パトは、そういう星の下に生まれ、そういう能力を持った選手なのだ。結果を残す能力とでも言おうか。
この能力はどこまで通じるのだろうか。
インテルやユーヴェとの一戦、CLでも発揮されるのか。
そんじょそこらの能力ではない。非常に楽しみだ。
さてさて、ではジラルディーノについても触れておこう。
オレがセリエAでジラをスタメンから見たのは、12月1日のユーヴェ戦までさかのぼる。
今年に入ってからの好調は、文字情報、ダイジェストでしか見ることができなかった。
だから非常に楽しみにしていた。
だが、ジラはゴールを奪うことはできなかった。
守備での貢献度は高く、クロスに飛び込むタイミングとポジションは、ゴールの予感を匂わせはしたが、シュートシーンでの硬さは相変わらずで、落胆を感じさせられたのも事実だ。
なにかまだ重いものを背負っている。焦っている。サッカーを楽しめていない。
まだまだ、ジラがゴールを量産する日は遠いかもしれない。
ピッポの復帰も待ち遠しい。だが、ジラの覚醒ほどオレを喜ばせるものはないのだが。
このフィオレンティーナ戦、MVPを選出するならネスタだ。
パトもその候補だし、カカももちろんだ。終了間際にチームを救ったカラッチが、もしかしたら一番ふさわしいのかもしれない。
だが、ネスタがいなければ何も始まっていない。このアンチェロッティの戦術も成り立たない。
ミスからムトゥに抜け出され警告を受けるプレーもあったが、ネスタがどれだけ攻撃を跳ね返し続けただろう。
ネスタは世界一のCBだ。オレだけでなく、誰もにそう言わせるプレーを見せてくれたと思う。
たのもしいかぎりだ。
CLも始まる。苦しいゲームが続いていくだろう。
だが、そのすべてをネスタなら跳ね返してくれるはずだ。
今カルチョで、古き良きイタリアの守備文化を体現しているのは、ネスタだけではないだろうか。
さあ、これでミランは今季初の3連勝だ。フィオレンティーナは完全に捕まえ、ユーヴェの背中も見えてきた。
「このところの我々は最高の試合をしているわけではないが」とアンチェロッティが言うように、まだまだ昨季の最高の状態に入ったわけではないが、そこに向かって歩みだしていることは確かだ。
パトが負傷したし、ガットゥーゾもいない。けが人が出てきた中で、これから1ヶ月は本当に踏ん張りどころになる。
ただ、エメルソンが使えるようになったし、ピルロを一列上げる変化は効果的だ。昨季にはないプラス要素もある。
次節は、ジラが出場停止で、おそらくパトもダメ。
ロナウドの出番になるだろう。ここで結果を出さなくて、いつ出す。
最後のワンピースはロナウドの完全復調ではないだろうか。
次週、そのピースがきれいに埋まることを、あまり期待はせずに祈ってみようかと思う。