J2 34節 vs岐阜“スナイパー”洋次郎
洋次郎の独壇場だった。
いつもとは違う最前列に位置し、決して得意ではないポストプレーを洋次郎は難なくこなし、すぐに寿人不在の不安を吹き飛ばしてくれた。
そして、2得点2アシストだ。
まずフランサのようなラストパスで浩司のゴールを演出すると、インザーギのようなゴール前の嗅覚を見せ、陽介のシュートの方向を変えて3点目を奪う。
さらには、好きな選手だというリケルメのような見ている人をドキッとさせるパスを送り、ハンジェのゴールをアシスト。しまいには、クロスに飛び込んで4点目を奪った。
7点のうち広島の力で奪った4点は、すべて洋次郎が絡んでいた。
このゲームに限らず、今季の洋次郎は大車輪の活躍を見せてくれている。眠っていたポテンシャルが、ついに、やっと、爆発した。
今の広島のサッカーは面白い。それは洋次郎の演出によるところがかなり大きい。
いまや欠かせない選手になった「高萩洋次郎」とは、いったいどういう選手なのだろう。
身長は182cm。体重は66kg。ひょろっとした体格をしている。
だが、その身体はずば抜けた持久力を持ち、少し身体の線は細いがフィジカルで劣ることはない。
そしてボールを扱わせれば、高い技術を駆使して、広い視野から創造性豊かなパスを繰り出す。
MFとしてのすべての能力を平均点以上兼ね備えた、パサータイプに分類される選手だろう。
パサーにもいろいろなタイプがある。
たとえば、G大阪の遠藤や名波浩らのような受け手にやさしいパスを送り、ラストパスの一歩手前で試合を組み立てるパサーがいる。
そしてもっとゴールに近い位置で、中村俊輔のような高精度のラストパスを届けるパサーや、中田英寿のような敵の間隙つくパサーがいる。
洋次郎は、中田英寿タイプに近いパサーだと思う。
中田英寿よりもゴールまで遠回りすることを好むが、プレーしている時の頭の中は似ているのではないだろうか。
相手と駆け引きをしながら、生じる隙を見逃さないよう目を光らせて、敵を欺き、虚を突く。
洋次郎は「スナイパー」のように神経を尖らせ、一発のパスで局面をがらっと変えてしまうのだ。
ただ、スナイパーとはいってもじっと好機を待っているわけではない。とにかくよく走る。
それもやみくもに走るのではなく、相手が嫌がるスペースを作るフリーランニングだったり、味方を助けるためにスペースを埋める走りだったり、状況を考えて効果的に走る。このあたりも中田英寿に似ていると思う。
そして洋次郎は、受け手としてもレベルの高い動きができる。
もともとボールを持たせたら怖い選手だったが、ボールがない時も気の抜けない選手になった。
これが洋次郎が今季大きく飛躍した要因だと思う。
課題を挙げるとすれば、シュートだ。
シュートを打たずイライラさせられることもあるし、シュートの精度も、針の穴を通すパスを出すくせに、高いとはいえない。
10得点は素晴らしい成績だが、もっともっと取れていたと感じるのは僕だけではないだろう。
本当に怖い選手は、やはりどんなパスを通す選手よりも、ゴールを奪う選手。
ゴールに強欲になることでパスもさらに効く。
今後、もっとプレースタイルを広げていってもらいたいし、独自の形をを築いていってもらい。
洋次郎は、いつか日の丸を背負う日も来るのではないだろうか。
十分可能性を秘めていると思う。
J1復帰まで、いよいよ秒読み段階に入った。
他のチームの結果次第では、36節の横浜FC戦で歓喜の瞬間が来る。
今節の岐阜戦を見ていると、いるべき場所が違うのだと、無駄な一年を過ごしていると、つくづく感じてしまうが、どうせなら圧勝に次ぐ圧勝でこのままシーズンを終えてもらいたい。
山形は、どうしても勝たないといけない相手だ。