陽介、ようやくの今季初得点だ。
リーグ戦は昨年11月の31節清水戦以来。公式戦では天皇杯準々決勝F東京戦以来。
長かった。
「これでもっと余裕を持てるようになる」。陽介もやっと本当の笑顔を浮かべていた。
この1点は、陽介本人にとっても、監督を始めチーム全体にとっても、サポーターにとっても、大きな大きな1点になったと思う。
首位を走り続ける広島に足りないものがあったとすれば、陽介の笑顔だったろう。
五輪イヤーでもあった重要な一年の前半戦は、負傷を繰り返し本人も周囲も失望ばかりだった。
だからなおさら、これからの巻き返しを期待したい。
背番号10の輝きを手に入れた広島は、いよいよ完全体となって後半戦に突入できる。
岐阜戦は、今季のベストゲームといえるくらいの広島の完勝だった。
ストヤノフの不在や過密日程など懸念材料がたくさんあった一戦を、強い気持ちで吹き飛ばしてくれた選手たちは本当に素晴らしい。
黒子に徹してくれたカズや浩司に支えられ、広島の魅力溢れるサッカーが爆発した。
実にしたたかに、明確な狙いを持って、得点を積み重ねた。
セットプレーから得点が生まれることは42分以前にわかっていたことだったし、キックの質と中の高さは岐阜を凌駕していた。
そして、相手のミスを逃さず連動した高速カウンターで加点。
前半のゴールは「広島の形」ではなかったかもしれないが、相手に絶大なダメージを与える、時間帯であり、奪い方だった。
我慢強く戦ってストロングポイントで得点し、隙を見逃さない。
まさしく「強者」のゲーム運びだったと思う。
後半に入っても、広島はしたたかだった。それでいて娯楽にも溢れていた。
巻き返そうと前がかる岐阜に対して、落ち着いてパスを回しながら、相手がバランスを崩した瞬間を逃さずに前線にボールを配給し、寿人が追加点を奪う。
この得点は寿人ならではの、研ぎ澄まされた嗅覚と集中力が結実した素晴らしいゴールだったが、チーム全体で組み立てた得点だった。
そして、この連戦で攻撃を一手に背負って活躍した洋次郎を休ませながらも、代わった一誠が忠実にプレーし、陽介が魅せたことでまったくパワーダウンはしなかった。
4点目も、後方でパスを何本もつないで相手の出方を伺い、心を折り、ハンジェへの盛田のスーパーなサイドチェンジでギアをあげて一気にPA内に進入し、PKをゲット。
浩司が(見ている方がドキドキする)PKを決め、ビッグアーチはお祭りになった。
その後も、久保と桑田はそれぞれの役割を果たし、再三スタジアムを沸かせて(陽介のスルーパスがずれなければもっと加点できただろう)、最後までまったく手を抜かずにゲームを締めくくった。
広島強し! まさに完勝と呼ぶにふさわしい勝利だった。
これで勝ち点は55。
ペトロヴィッチ監督が「ターニングポイント」と捉えていた3連戦を、2勝1分の成績で乗り切ることに成功し、J1昇格の尻尾をつかんだ連戦になったのではないかと思う。
この3連戦、チームは非常にたくましかった。
寿人がしっかりと結果を残し、カズや浩司がチームを支え、選手の闘志を指揮官は駆り立て、昭大や陽介や盛田らの新パワーの台頭もあった。
広島の底力を高らかに示した連戦になったと思う。
ただ、次節C大阪戦に負けては何も意味を成さない。
1つのターニングポイントは乗り切った広島だが、最後にトップに立っているかどうかがすべてだ。
これからは上位陣が続き、酷暑のなか長距離アウェイ戦が多くある。
まだまだ苦境は待ち受けているだろう。
今後も継続して力を誇示し続けてもらいたい。
今節のような魅力的なゲームは、癖になる。
サッカーと広島を愛する老若男女に通ずる、醍醐味がつまったゲームだった。
みんなが魅せられたし、選手たちも楽しかったはずだ。誰もがこのゲームは絶対に忘れない。
だからこのゲームを見てしまった人は、「また見たい。またしたい。」と、普通思う。
ただ、この気持ちが勝利への欲求より上回らないようにしないと。
こんなゲームなら毎日でも見たい。毎試合こういうゲームをして欲しい。一度したのだから、できるということでもある。
だが、こういうゲームをまたする為に、犠牲を払ったり、リスクを負う必要はない。勝利の付加価値でいい。
「まず勝利」そう自分に言い聞かせようと思う。