元日にサッカーをする、観る。1つの夢舞台だ。
僕は国立へ連れて行ってくれた選手たちに、本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。
いろいろなことがたくさんあった07年だったし、終わりよければすべてよし、とは言えないほど、広島が失ったものが大きい。
だが、この舞台に連れて来てくれた。
1月1日に08年のスタートを切ることができた。
負けはしたが、1月1日にスタートを切れたことには、大きな意味があったと思う。
29日。G大阪との国立の切符を賭けての戦いは、寿人の24秒弾で幕を開け、広島がG大阪を一蹴した。
G大阪の攻撃をしっかりと受け止め、遅功とカウンターをおりまぜて攻撃を仕掛けていく。龍一が追加点を奪い、一誠が止めを刺した。
選手全員が役割を果たし助け合い、「勝つべくして勝った」(ペトロヴィッチ)内容で広島は勝利した。
唯一の残念な出来事は陽介の警告。決勝まで勝ち上がった1人の立役者として、決勝の舞台を踏んでほしかった。
しかし、あと1つ優勝しかない。広島は、団結して勢いにのり、元日のピッチにたどり着いた。
決勝の相手は鹿島。Jリーグ王者だ。
思い切ってぶつかればいい。広島のサッカーを体現できれば勝てる。臆することはない。
選手と言葉を交わせば、たのもしさと期待感をどんどん膨らませてくれた。
陽介の代役洋次郎の表情もいい。
誰もが勝つことしか考えていなかった。
元日。
新年の風物詩でもある天皇杯決勝には、さすがに多くの人が詰め掛けた。
気持ちは自然と昂ぶる。素晴らしい舞台だった。
しかし、その雰囲気に浸れるのはゲーム開始前までだった。
王者鹿島は、強かった。
不運といっていい先制点を内田に叩き込まれると、鹿島のペースでゲームが進んだ。
この先制点がなければわからなかったとは思う。
洋次郎を後半から起用し、一誠でスタートしていればと思う。
浩司のポジションを最初から前にしていればと思う。
もし陽介が出場できていたら、違う展開にはなっていただろう。
陽介の大きさをまざまざ痛感させられた。
だが、前半の鹿島を相手に、広島は自分たちのサッカーをまったくさせてもらえなかった。
出場停止やケガも含めてのチーム力だ。
鹿島との力の差は、チーム全体の力の差として、小さくはなかった。
後半、浩司がポジションを上げたことで、広島のリズムの時間帯がやってきた。
小笠原と青木のダブルボランチに時間を与えず、相手2トップをつぶして、人数をかけて攻撃を仕掛けることができるようになった。
だが、洋次郎がPA内で公太の折り返しをフリーで受けるも、シュートに至らない。
浩司のミドルシュートは、曽ヶ端のファインセーブで逃れられた。
前半から攻撃を支えていた駒野の突破は、鹿島の2重3重の粘り強いディフェンスにあい、決定打にはつながらない。
DFラインと下田は鹿島の攻撃を瀬戸際で食い止めて、1点差をキープし続けたが、どうしても1点がとれない。
2トップ、寿人と龍一にシュートチャンスが訪れず、鹿島の壁を崩すことができなかった。
狂ったゲームプランをなかなか立て直すことが出来ない。
最後の詰めを欠き、必要な1点がとれない。
天皇杯で得た勢いと団結をもってしても、今季終盤からずっと続いている課題は解消できなかった。
選手がいないという側面はあったにせよ、相手にはめ込まれた時に手を打てないペトロヴィッチ。大一番の弱さを露呈した。
選手は最後まであきらめず戦い抜いた。だが、すべてにおいて鹿島が一枚上だったことは否めない。
勝ちたかった。カップを掲げ、どっぷりと幸福に浸りたかった。
だが僕は、決勝を「負けてよかったのかもしれない」と思っている。
天皇杯は、己の自信と周囲の信頼を取り戻すための戦いだった。
1ゲーム1ゲーム勝って決勝まで駒を進めたことで、自信と信頼は徐々に回復することはできたと思う。
決勝まで来た意味は大きい。準優勝は胸を張っていい結果だ。「課題より成果の方が大きい」(槙野)天皇杯だった。
だが、08年をこれから戦っていく第一歩として、鹿島が目の前でカップを掲げるのを見る悔しさは、入れ替え戦に敗れた悔しさと共に、絶対に大きな糧となる。
なぜ良くなり、何が足りなかったのか、しっかりと検証しなければいけない。この作業こそが何よりも大事なんだ。
そのためには、負けてよかったのだ。
08年、広島は地に落ちての再スタートを切る。
J2の舞台は、J1復帰が至上命題の厳しいシーズンが待っている。
「またこの場所に戻ってきたい。そのためにはチームとしても個人としても成長していかないといけない」(寿人)。
今は、おごりなく上だけを見つめて進んでいく姿勢こそが必要だ。
おつりがくるほど、意味のある敗戦だったと思う。
いや、絶対にそう思えるようにしなければならない。
また来年戻ってこよう。
今は、この悔しさを噛み締め、より強くなって、来年戻ってこよう。