ビッククラブ浦和
得点ランキングトップを走るワシントンと、中盤の要鈴木の欠場を、浦和は余儀なくされていた。それでもピッチに現れたイレブンは、まったくそんなことを感じさせない顔ぶれだ。さらに、山田、相馬、ポンテ、黒部らがベンチを暖めている。実際に敵として目の当たりにして、リーグ屈指の戦力をまざまざと感じさせられた。
そして、4万人近く埋まった埼玉スタジアムは、日本で最もアウェイを感じる場所だ。足を運ぶことができなかったことが、本当に悔やしい(涙)。
監督、選手共に、この場所は特別だと語っている。ゲームが始まる前に、ここ埼玉スタジアムで浦和に勝つことは、広島にとって金星といえる出来事なのかもしれない。そんな気持ちをブラウン管を通してでさえ感じたほどだ。
認めよう、というか、現実だ。浦和はビッククラブである、と。
戦った広島
だが、広島の選手たちは、そんな雰囲気にのみ込まれてしまう事もなく挑むことができていた。個々がそれぞれのプレーを見せ、チャンスも十分に作ることができた。CKの数では浦和を上回っている。広島が勝っていても、そこまで驚くことはないゲームだった。ブッフバルトは、「とにかく勝点3が取れて本当によかった」と語っている。紙一重のゲームであったということだ。 個人の差を、チームみんなで埋めることができていた。
ペトロヴィッチのサッカーが浸透しはじめ、攻撃と守備のときの狙いが、チームとしてまとまってきている。浦和相手に押し込まれるのは仕方ない。ならば、2トップを生かしたカウンターに活路を見出そう、というプランは、みんな描いていたはずだ。
不安は取り除かれ、自信に変わりつつある。ゲームに入る前の心境は、かなり変わってきている。
意外性
広島はチャンスを作れていた。とくに、後半開始からは、浦和ゴールを何度も脅かしていた。ただ、ゴールをこじ開けたのはウェズレイのラッキーともとれる一発だけだった。
その理由は、浦和ディフェンスの強さもあったし、クロスやラストパスの精度という問題もあった。が、今の広島の攻撃に最もかけているのは、意外性だ。
浦和DF陣は、広島の攻めにいやらしさは感じても、予測を裏切られたことはなかっただろう。すべてのプレーが、わずかでも頭の中に浮かんだものだったはずだ。予測の範囲内であれば対処する力を、彼らは持っている。だから混乱することなく、冷静に対処されてしまうのだ。
浦和DF陣の、予測を裏切る、言いかえれば、期待を裏切る、意外なプレーが広島の攻撃にはなかった。
ウェズレイのゴール。あれはまさに、GKの予測を裏切ったものだ。
柏木・浩司
柏木は十分に特徴を発揮し、長谷部と対等に渡り合っていた。浩司もDFに走り回りながら、前線にも顔を出す運動量を見せていた。
だが、浦和の選手たちは、彼らに怖さを感じなかっただろう。
浦和のトップ下を勤めていた小野は、決して機能していたとはいえないが、何をしでかすんだ、という恐怖感があった。その理由は、彼がチャレンジしてくるからだ。
技術があるからこそなのだが、バイタルエリアで前を向いてボールを受けようとし、常に一発で決定的なパスを通そうと狙っているのだ。そういうチャレンジをされることを、相手が嫌がるのも知っているし、自分の技術と才能の活かし方も知っているのだ。
柏木と浩司も、その才能を持っている。だからこそ、もっともっとチャレンジしていってもらいたい。挑んでいってもらいたい。広島の攻撃は、彼らが創造していかなくてはいけないんだ。
チャレンジしなければ、その才能は、日の目を見ることはなくなってしまう。
タレント
駒野は、対するアレックスとの攻防で、完全に主導権を握っていた。運動量、攻撃に加わる回数、クロスを送った本数、どれもアレックスをしのいでいた。だが、アレックスは、1本のクロスで、ゲームを決めるアシストを送り、チームを勝利に導き、自身も勝者になった。
僕は、個人レベルで、ゲームに対して高い影響力与えられる選手を、タレント性がある、という表現をする。
アレックスは高いタレント性を持っている。これは、トルシエ、ジーコ、オシムから選ばれていることからも、正しいと思う。
駒野にそのタレント性がないわけではない。将来性を考えれば、アレックスを超える可能性だって十分ある。ただ、現時点でアレックスよりも劣っている。それがこのゲームでの勝敗に大きく左右してしまった。1人の選手の1つのプレーが、ゲームを決めてしまったのだ。
駒野は相当悔しかっただろう。ぜひ、越えてもらたい。今よりも技術を磨き、結果を積み上げて、ゲームを決めれる選手へと。
結果
優勝争いを戦うチームに、選手層、スタジアム、クラブの規模、すべてにおいて一級品の浦和に乗り込んで、広島の選手たちは、とてもよく戦った。いいゲームを見せてくれた。
だが、結果として得たものは、浦和が3、広島は0だ。いいサッカーを見せても、後一歩まで追い詰めても、内容では負けてなくても、結果がついてこなければならないのがプロの世界。勝負の世界だ。
いいゲームができた。自分たちのサッカーができた。それで満足してもらっては困る。
いいゲームができた。それを勝利につなげなくてはならない。その為にするべきことは、まだまだ山のように積んであるが、そのヒントを得られたゲームだったはずだ。